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尾道町をブラリ歩くと凹みがポツンポツンと

凹みの美学/Hekominobigaku> 七竈/NanakamadoRojiCafe

七竈/NanakamadoRojiCafe


七竈/NanakamadoRojiCafe
路地にしては道幅が広いので、どうしようか迷ったのを覚えている。いまでは路地ニャンの「路地」のカテゴリーにどっかり納まっている「米場町」。東西に伸びるこの道は、名前の通り2〜30年前ぐらいまでは米屋が2〜3軒あった通りだ。尾道に不慣れな観光客でも、薬師堂通りに面した「朱華園」という老舗の中華そば屋(2019年6月より長期休業)の前からまっすぐ海に向かってずんずん進み、左手レンガ壁の倉庫(海産物問屋・村上商店のレンガ築きの木造三階建は、2019年7月解体された)を目安に左折するとこの道に入る。ず〜と先のどん詰りには、思わずヨダレが出る、あの「一口」の店(2018年12月に2〜300m北に移転)が見える。ここの通りが米場町だ。
この道には、新喜農機具店、旧住友銀行、向酒店、尾道歴博などレトロな佇まいが続く。古き香りを嗅ぎながらトコトコ足早に進んで行くと、「一口」の店があった角から左の路地や右の裏路地に足を踏み入れると、吾輩たち猫族の別天地となった巨大迷路の歓楽街が現れる。昔は、この地域は新地と新開に分かれており、例えば新地芸者と新開芸者では格が違っていたようだ。
最近では、この歓楽街を地元の者は総じて「新開(シンガイ)」と呼び、新地は忘れられているようだ。この歓楽街は、半世紀前ぐらいまで、酔い客でワイワイガヤガヤ賑わっていたのだが、いまでは信じ難い静けさに包まれている。
最近、この米場町にまた一つ、レトロ感覚の建物が誕生した。最初はなんだか洒落た住宅(?)、どんな人が住むのだろうかと吾輩、想いをめぐらしていたが...。レンガ壁の倉庫の装いも新たにし、凹みの中に喫茶店がオープンしたのだ。店の看板の意匠といい、店名の七竃(ナナカマド)ROJI CAFEといい、実に洒落ている。吾輩はこの店が休日で、車がいない風景がお気に入りだ。テンポは遅いが、この通りに似合う意匠の建物が漸くまた一つできあがった。尾道人(市民)だけは、やはり「米場町」の魅力がわかっているのだ、と路地ニャン公の独り言。
それにしても、この通りのコアとなるべき由緒正しき旧住友銀行を未だにまちづくりの重要な装置として利用することもなく、放置する行政の企画能力には脱帽する。尾道市庁舎や公会堂など近代建築の文化的価値もご存じない尾道市、これで「日本遺産」とは、心ある尾道人も驚くばかりだ。

七竃ROJI CAFEが誕生して喜んでいた吾輩だが、悲しいことにレンガ壁の木造三階建の蔵が突然解体された。まちをウロウロ歩いている吾輩の目には、尾道市が日本遺産に認定された平谷市政になってから、尾道市公会堂をはじめとして歴史的建造物がどんどん壊されいるように思えるのだが…。文化を支える尾道の風景は、うすっぺらのどこにでもある普通の街の風景になっていくようで、吾輩はオロオロするばかりだ。(2019年7月)
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